SCS Global Consulting (Vietnam) Co., Ltd.
ベトナム・ホーチミン市
General Director / 公認会計士
尾崎 士朗さん


尾崎 士朗さん
ホーチミン市を拠点に10年超。日本人公認会計士とベトナム人専門家が一体となり、ベトナム進出の日系企業の会計・税務・M&Aをワンストップで支援する事務所です。
公認会計士を目指したきっかけ
── 公認会計士を目指そうと思ったのはなぜですか?
カッコいい動機はなく恐縮ですが、大きく分けて2つあります。
一つ目は、大学2年のときに心理学の授業でIQテストを受けたところ、教授から高得点者の一人として名前を挙げられ、「国家に貢献する仕事をすべき」と激励されたことです。それが背中を押したのか、気づいたら予備校に申し込んでいました。公認会計士が国家の貢献になるかはさておき。(笑)
もう一つは当時の外部環境です。ちょうどリーマンショックの影響で就活市場が大混乱していた時代で、優秀な先輩方が苦労している様子を目の当たりにしていたこともあり、資格を取って就活市場とは別の軸でキャリアを築こう、という意識が後押しになりました。
── 受験勉強はどのように進めましたか?
資格の大原に通いました。大学2年の終わりごろから始め、4年の夏の論文式試験で合格したので、学習期間は約1年半ですね。
生半可な気持ちで始めたわけではなかったので、最初からフルスロットルで勉強し、最後まで高いモチベーションで走り切れました。自分でも何でか不思議ですが、シンプルに環境に恵まれていたことが大きかったと思います。大原の先生やチューターの方々が非常に親身で、勉強の相談はもちろん、気分が乗らないときにはランチを奢ってモチベートしてくれるくらいの関係性でした。また親しい受験仲間もみんな意識が高く、楽しみながらハイレベルの切磋琢磨ができました。もし一人で孤独に戦っていたら、挫折していた可能性は十分あると思います。
あとは、自分自身が背水の陣だったことも大きいです。一般的な就活をしない方向で決めており、4年時の論文試験に落ちたら卒業後も会計士試験浪人確定という状況でした。「絶対に1発で決める」という強い意気込みはありましたね。
── きつかった時期は?
緊張しいなので短答式試験の本番当日に発熱してしまったことですね。ロキソニンと一番高いユンケルを飲んで、試験中は熱さまシートを頭に貼りながら気合いで乗り切りました。でも試験が終わったタイミングでスーッと熱が引いて、そのまま普通に友達と飲みに行ったのを覚えています。
あらためて、病は気から、気持ちが体調に大きく影響するものだと実感した出来事でした。他に勉強中につらかったことがあったかというと、もう覚えてないですね。合格した瞬間にすべて良い思い出に塗り替わってしまいました。(笑)
── 合格したときの気持ちは?
試験が終わった時点ではある程度手応えはあったのですが、いざ合格発表を見た瞬間は、思っていた以上に、グワッと嬉しさが来ました。自宅でオンラインの合格発表を確認し、番号を見た瞬間に近所迷惑になるくらいの雄叫びを上げてしまいました。
同時に、長く続いた受験生活がやっと終わった、という解放感も大きかったです。
キャリアの出発点からベトナムへ
── 最初に入られた事務所と、そこを選んだ理由を教えてください。
KPMGあずさ監査法人に入社しました。当時私の周りではBig4と呼ばれる大手監査法人への就職が王道でしたし、グローバルな仕事に関わりたいという漠然とした思いもあり、国際的なファームを志望していました。実際に各社の面接を受ける中で、一番話しやすく、自然体でいられたのがKPMGで、それが決め手になりました。
── KPMGではどのような仕事を?
KPMGでは東証一部上場企業の金融商品取引法・会社法監査や内部統制(J-SOX)監査に携わりました。IFRSを適用する企業や、海外に子会社を持つ親会社の財務諸表を扱う機会もありました。子会社往査でベトナムへ出張する先輩の姿を羨ましく見ていたのを覚えています。
── ベトナムに来ることになった経緯は?
直接のきっかけはKPMG時代の夏休みです。閑散期に同僚と2週間ほど東南アジアを周遊したのですが、タイやベトナムなどが放つ街全体の熱気に完全に圧倒され、シンプルに「ここで住むのも面白そう」と感じました。
その後、縁があってSCSグループの方と知り合う機会があり、ベトナム拠点の立ち上げメンバーとして声をかけていただき、思い切って飛び込んだのが今に繋がっています。
ちなみに、SCS代表の少徳さんはロックな人で、ちょうど日本に一時帰国されていた彼との最終面接もご多分に漏れずかなりロックでした。赤坂の酒場スタートで、17時から25時くらいまで何軒もハシゴして……終電は見事に逃しましたが、内定はしっかり頂いて帰りました。(笑)
── 周囲の反応はどうでしたか?
あまり覚えていないくらい、普通だった気がします(笑)。
いきなり海外ということで驚かれはしましたが、誰かに反対されたという記憶はないですね。当時25歳と若かったので、「若いうちにやってみれば」くらいの空気感だったのかもしれません。今の年齢で、家族もいるとなると、当然違うリアクションでしょうし、自分自身も慎重になるはずです。
── ベトナムに来た最初の印象は?
とにかくエネルギーを感じました。ベトナムの代名詞ともいえるバイクだらけのカオスな交通、ローカル市場の喧騒、街全体にあふれる活気。街自体が上野のアメ横のような元気と勢いがありました。
インフラ面や衛生面など、日本との違いに戸惑うこともありましたが、それ以上に「ここなら刺激的な生活になりそうだ」という直感がありました。その感覚は今でも変わっていません。
SCSベトナムでのキャリア〜代表就任まで
── SCSベトナムに入った当初の仕事はどのようなものでしたか?
設立1期目の立ち上げ期に着任しました。当然お客さんはほぼゼロという状況ですので、とにかく仕事を取ってくることが仕事でした。営業は未経験でしたので、右も左も分からない状態です。オフィスでやることがなく(仕事が少ないので)時間を持て余しているメンバーを見ると、何とか早く成果を出したいという気持ちで、とにかく外回りして受注機会を探っていました。
── ベトナムの税務・会計の複雑さに直面したエピソードはありますか?
ベトナムの制度はとにかく頻繁に変わります。赴任する前に予習のために読み込んでいたベトナムに関する本が、今見返すと半分くらいは情報が古くて使えなくなっているレベルです。
また、短期間で解釈や運用が変わることも珍しくなく、クライアントから「先月と話が違う」と言われて改めて調べ直す場面も何度もありました。法整備のスピード自体は速いのですが、実務がそれに追いつかず、旧制度のまま現場が動き続けるような法と実務の乖離も日常的に起きています。そういった対応力こそが、今の事務所の強みにもなっています。
── 営業未経験の中でどのように乗り越えましたか?
上司からもらった言葉が今でも仕事の根底にあります。「コテ先のテクニックではなく、人に興味を持つこと、そして信頼を獲得すること」。そして「まずは仕事を取ってから考える」という姿勢です。できないかもしれないと言い出したら何も始まらないので、受けてから考える、やってから考えるという姿勢が自然と身につきました。
業務の中心は日系企業の財務諸表の作成・月次決算・税務申告です。立ち上げ期は翻訳から法人設立支援まで、何でも引き受けました。チームはベトナム人スタッフ4名でのスタートでした。
最初のクライアントから顧問契約をいただいた瞬間は、一番記憶に残っています。信頼を勝ち得たあの瞬間が、今でも大きなターニングポイントとして心に残っています。
── 代表に就任した経緯を教えてください。
ベトナム法人の立ち上げを担当していた、私が尊敬するメンター的なボスが当時の代表でした。彼は、近くタイ拠点の立ち上げのためにベトナムを離れる予定があり、その後任が私という形が決まっていたため、着任当初からほぼ全ての裁量権を預けてもらっていました。
その方が私の着任後すぐにタイへ異動になり、当時まだ経験も浅い20代の私が代表として会社を率いる立場になった、という流れです。SCSグループには若い人間に大きな裁量を与える文化があり、そのおかげで今の自分があり、非常に感謝しています。
── 代表になってから、仕事の景色はどう変わりましたか?
最初は、組織マネジメントをどうするかとかよりも、シンプルに、まず売上をあげる、つまり仕事を獲得すること、に集中していました。
営業未経験の会計士が、いろんな会社の方と人間関係を構築し、徐々に信頼を頂き、少しずつ契約させて頂くお客様が増えて、その結果自分含め従業員の待遇も上げていく過程は、監査法人でサラリーマンしていた頃には絶対に味わえない経験でした。
最初の半年は契約ゼロで、さすがに希望を失いかけて泣きたくなるような日々でしたが、3年目あたりで収益が安定し始めてから、ようやく「組織と人どう成長させるか」という視点が生まれてきました。現在は50名ほどの組織になっており、人材育成と組織づくりが主要な仕事になっています。
10年間のベトナムと事務所の変化
── ベトナム自体はどのように変わりましたか?
街の変わりようは、本当に劇的ですね。
2014年に来た頃、既に相当便利ではありましたが、それに比べても格段に便利になりました。外資系の飲食店やスーパーも増え、コンビニでも日本食が普通に手に入るようになっています。
例えば、当時は手に入らなかった納豆や生卵を、今では日常的に食べているという状況です。また、日本のODA支援による初の地下鉄も開通し、新しいマンションやビル、橋、道路が次々と建設されています。10年前と比べると、都市の景色そのものが大きく変わりました。
国としても、人口が1億人を突破し、平均年齢も30代前半と非常に若い。こうした若い労働力を背景に、これだけのスピードで成長している点にはポテンシャルしか感じないですね。
一方で、かつては緑や自然が広がっていたエリアが、急速な開発とともに少しずつ姿を消しているのも事実です。便利さと引き換えに、失われていくものもあると実感しています。
── 事務所としての変化はどうでしょう?
立ち上げ当初は、営業基盤もなく、まずは「アポを取る」「1件仕事を取る」こと自体が非常に大変でした。とにかく契約させていただいた目の前の案件を一つずつ積み上げる毎日でした。
現在では、進出支援やベトナム国内の会計税務に加え、クロスボーダーのM&Aアドバイザリーや業務拡大支援など、サービスラインも大きく広がりました。クライアント層もスタートアップから上場企業グループまで多様化しており、求められるレベルも年々高くなっていると感じます。人員拡大に伴って、オフィスも現在までに計3回移転していまして、その都度、心機一転で気合いを入れ直しました。
最近は、売上だけでなく、人材育成や組織づくりそのものが重要なテーマになっています。
── 最も記憶に残っている転換点は?
最初の顧問契約が成立した瞬間ですね。最初の半年は契約ゼロで、直前でキャンセルになった案件もあり、本当につらかったです。その後、やっと成立した第一号の契約は今でも鮮明に覚えています。
会計事務所を含む外注パートナー選定には、過去の実績を最重要視する日系企業が多い中、まだ実績ゼロにも関わらず、信頼して任せてくださったお客様があってこその今だな、と思いますね。本当に感謝しています。あの時は「なんとかやっていけるかも」という手ごたえを初めて感じられました。
あとは、プライベートな話になりますが、結婚し、子供も生まれたことも私個人にとっての大きな変化です。守るべき存在ができたことで、よりエンジンがかかった感じがします。
SCSベトナムのこれからと、求職者へのメッセージ
── これからSCSベトナムをどのように成長させていきたいですか?
クオリティの向上と事業領域の拡大を両輪で進めていきたいです。進出支援や会計税務といったコア事業は、さらなる深化と効率化を図りつつ、M&Aに加え、海外グループの管理体制づくりやガバナンス・内部統制の整備など、クロスボーダーでの経営管理を支える領域を広げていきたいと考えています。
また、ハノイとホーチミンの2拠点を基盤としながら、ベトナムに限らず、国際的な案件対応力を高めていきたいと考えています。日系企業の海外展開をトータルで支援できる体制を構築していくことが、ベトナム拠点だけでなくグループ全体の重要なテーマです。
── どのような人材を採用・育成したいですか?
結論、一番大切にしているのは「誠実さ」です。スキルは後から身につきますが、不誠実な大人を後天的に変えるのは難しい。ベトナム人メンバーやクライアントと長期的な信頼関係を築いていくためにも、この点は特に重要だと思います。
次に、「自分で考えて動けるかどうか」です。日本の大企業と異なり、うちはまだルールやマニュアルが完全には整っていない組織です。既存の枠組みに従って業務をこなすというよりも、不足している部分を自ら考えて形にしていける人が、この環境に一番フィットすると思います。
あとは、新しいことに対して素直に面白がる方が向いています。例えば、今どんどん進化するAIツールをとにかく試して業務に取り入れていくような姿勢ですね。「安定した環境でコツコツやりたい」というよりも、「未完成な環境を面白がりながら自分で作っていく」というマインドの方が、ここでは大きく成長できると思います。
── 最後に、SCSでの海外勤務経験への挑戦を検討している方へメッセージをお願いします。
20〜30代で海外に目を向ける会計士は、実はとても少ないのが現状です。その分、今の海外就職マーケットは売り手市場になっています。体力と時間のある若いうちにトライする価値は、間違いなくあります。
振り返ると、私自身もこの国と一緒に成長させていただいた10年でした。個人として急速に成長できますし、ビジネスの最前線でリアルな経験を積める環境はそう多くありません。そして面白いのは、外に出ることで日本の良さや、逆に自分がいかに日本のことを知らなかったかにも気づけるんです。海外経験は、結果的に日本という国を深く理解することにもつながると実感しています。
そして仕事だけでなく、生活自体も面白い。私自身、妻がベトナム人なので、在住日本人ではなかなか行かないようなローカルスポットや旅先、お店に連れて行ってもらえるんです。ベトナムという国の深いところまで楽しめているという意味では、単純に人生の豊かさに直結していると感じています。ぜひ一度、話を聞きに来てください。
FIRM INFO
事務所基本情報
| 事務所名 | SCS Global Consulting (Vietnam) Co., Ltd. |
|---|---|
| 所在地 | Level 11, SGGP Tower, No 436 – 438, Nguyen Thi Minh Khai Street, Ward 5, District 3, Ho Chi Minh City, Vietnam |
| 電話番号 | +84-28-3822-8676 |
| メール | ozaki@scsglobal.com.vn |
| 担当者名 | 尾崎 士朗 |
| Webサイト | https://scsglobal.co.jp/office/vietnam |
